新卒1年目の資産形成をどう考えるべきか?

assorted banknotes and round silver colored coins 投資
Photo by Pixabay on Pexels.com

皆さんこんにちは。神奈川大学経営学部・准教授の尻無濱です。

ゼミの4年生とのお別れ会で、新卒1年目の資産形成についていくつか相談を受けました。新NISAも始まり4月からはお金を稼げるということで、ゼミ生たちも気になっている様子。

ゼミ生たちを念頭に置いて、新卒1年目の資産形成の考え方について、私の思うところを書いてみようと思います。先に結論を示しておきます。

  • まずは生活費半年分の生活防衛資金をためる
  • 若いうちは自己投資したほうがリターンが大きい
  • 余ったお金でコツコツ投資するくらいで。私なら全世界株式に連動する投資信託を買う

まずは生活防衛資金をためよう

NISAを活用して投資を…と考える前に、まずは生活防衛資金をためるほうがよいかなと思います(泉・坂本『節約・貯蓄・投資の前に 今さら聞けないお金の超基本』両学長『本当の自由を手に入れる お金の大学』参照)。

生活防衛資金とは、仮に病気で働けなくなったり会社が倒産したりして収入が途絶えたとしても、しばらくは生活できるようにためてあるお金のことです。

生活防衛資金は一般に半年分ぐらいためておけば安心とされています。急病、会社の倒産などの不運があっても、半年分ぐらい生活できるお金があれば何とか生活を立て直せるだろうということですね。

生活防衛資金をためる前に投資を始めると、急病や会社の倒産で収入が途絶えた時に、生活のためにせっかくの投資を取り崩さなくてはならなくなります。そのとき利益が出ていればいいですが、損失が出ていると目も当てられません。

このような事態を避けるためにも、まずは生活防衛資金をためておきましょう。

金融用商品に投資するべきか?

生活防衛資金がたまったら、すぐに株や投資信託を買おう!…と考える人もいるかと思います。ですが、新卒1年目の人にはもっと良い投資先があるのではないかなと思います。

それは、自分自身です。特に若いうちは伸びしろも大きいので、自己投資をしていろいろな知識・経験を積む、資格を取得するなどしたほうがよいです。自分への投資は、新しい仕事の機会が増える、昇給・昇進につながる、より待遇がいい職場への転職につながるなど、リターンが大きいです。

新卒1年目の給料で投資に回せる分はわずかですし、それで株や投資信託を買っても、金額でみて大きなリターンは得られません。

それなら、自分に投資したほうが(将来の昇給・昇進・転職などを通じて)入金力が高まるので、投資効率がいいと考えます。

自分への投資には、若い時にしかできない経験をするためにお金を使うことも含まれます。私は若い時に大学のある筑波から実家の鹿児島までキャンプをしながら自転車で帰りました。2週間ほどかかったのですが、旅先での出会い、忘れられない景色など、とてもいい思い出になっています。また、子供が生まれる前に妻といろいろなところに旅行に行ったのもいい思い出です。

今は仕事・子育て共に忙しくなりなかなか自由が利かないですが、若いうちに様々な経験をしたことが、大切な思い出になっています。思い出すたびに、まるで投資から配当を得るように楽しい気持ちに浸れます。いわゆる「思い出の配当」というものですね(パーキンス『Die with Zero』を参照)。

新卒1年目は、金融商品よりも自分に対してお金を使いましょう。

それでもお金が余ったら金融商品に投資しよう

自分のためにお金を使っても、お金が余ってしまった。余ったお金を銀行口座に預けたままではもったいない。そういう人もいるでしょう。また、将来のために今から少しずつでも金融商品に投資しておきたいという人もいるでしょう。そういう人は、金融商品への投資を考えてもよいと思います。

本来は、将来必要な支出について計画を立て、そのためにいつどのくらい貯めればいいかを計算し…と、いわゆるファイナンシャルプランを立てたうえで、金融商品への投資を考えるべきです。

ただ、ここでは「余ったお金を10年後、20年後といった将来のためにとりあえず何かに投資しておく」という設定で、ファイナンシャルプランを考慮せずに投資をすることを考えます。

私が新卒1年目だったら何に投資をするか。私だったら、市場全体に連動するような投資信託に投資します(マルキール・エリス『投資の大原則』ボーグル『インデックス投資は勝者のゲーム』参照)。個別株(例えばトヨタ、Sonyなど)は、儲かるときは大きく儲かりますが、企業の業績によっては大きく損失を出すこともあります。値動きが激しいので、利益や損失のふくらみが気になって、仕事が手につかなくなることも…(経験談)。なので、1つの会社に投資するのではなく、市場全体に投資して個別の企業が抱えるリスクを負わないようにします。市場全体に連動するような投資信託であれば、全体として経済が成長していれば長期的には儲かる確率が高いとされています(シーゲル『株式投資』イルマネン『期待リターン』などを参照)。

市場全体に連動するような投資信託には、例えば日本株と連動するような投資信託、米国株と連動するような投資信託、新興国株と連動するような投資信託など様々な種類があります。どの国が将来にわたって経済成長していくかわからないので、私だったらどれか一つの国の株式市場に投資することは避けます。その代わりに、世界全体の株式市場の成長に投資するでしょう。こうすれば、仮に日本や米国がダメな時期でも、ほかの地域(新興国や欧州)からリターンが得られるため、損をしにくいと考えます。世界全体が経済成長しないということは考えづらいので、全世界株式に連動する投資信託を毎月余ったお金でコツコツ買っていくことでしょう。

具体的な投資対象を選ぶ際には、全世界株式連動型の投資信託ランキングから、コスト(信託報酬等)が安いものを私なら選ぶと思います。

余裕が出てきたら、毎月一定額(例えば5,000円、10,000円)を積み立てるように証券口座で設定しておくとよいでしょう。ほったらかしていても、少しずつ投資額が増えていくので楽ですよ(山崎元・水瀬ケンイチ『ほったらかし投資術』参照)。

おまけ:尻無濱は何に投資をしているのか

上記は新卒1年目の人に向けての話ですが、私自身はもう少し手間をかけて投資対象を分散しています。ちょっとややこしいので、新卒1年目の人にオススメする方法ではないですが、気になる人もいると思うので書いておきましょう。なお、私は個別株もやっていますが、それについては話がそれるのでここでは触れません。

インターネットバブルの崩壊やリーマンショックなど、株式市場全体が壊滅的な状況に陥るときがあります。そのような状況で急遽資金が必要になった場合、株式投資信託しか持っていないと損失を出しながら資金を取り崩すことになってしまいます。なので、できれば株式以外の投資対象(アセットクラスといいます)にも投資しておきたい。例えば、債券、不動産、コモディティ(金など)は株式と必ずしも値動きが連動しないので、そういうものが投資候補になりますね。また、株式自体も全世界株式を買うのではなく、日本、米国、欧州、新興国と区分して買っておきたい。地域分散しておいて、有事の際に好調な市場から取り崩せるようにしておきたいということです。

アセットクラス間や地域間の資金配分(アセットアロケーション)を考える場合には、どのアセットクラス、どの地域にどれだけ割り当てるかを考える必要があります。考え方はいろいろあると思いますが、私は『アセットアロケーションの最適化』という書籍を参考に、株式投資信託85%(うち日本28%、北米24%、欧州24%、新興国9%)、債券5%、金10%に投資しています。信託報酬が安いeMaxis Slimシリーズを中心に、それがない場合は三井住友やブラックロックなどが販売している商品を買っています。

私は毎月定額積み立てをしています(いわゆるドルコスト平均法)。一度積立額を設定しておけばほったらかしていてもどんどん積み立てられ、運用されて増えていきます。私はSBI証券を投資信託積立に使っているのですが、クレジットカード積立機能三井住友ナンバーレスカード等のクレジットカードを利用)を使えば、積み立てた金額にポイント(私はVポイントを利用)もつきます。そのポイントで追加で投資信託を買うこともできます。

投資信託の残高に対してもポイントが付くので(投信マイレージ)、毎月少しずつポイントがたまっていきます。もちろんこのポイントも投資信託に回すことができます。なんだか錬金術みたいですね。

積み立てていくと、好調な投資信託もあれば不調なものもあるため、最初に指定した投資割合からずれていくことがあります。こういうずれを放っておかずに、年に1回ほどリバランスすることも必要でしょう。投資信託に関するリバランスとは、目標とする割合をこえてしまった投資信託を売却し、目標とする割合よりも少なくなってしまった投資信託を買うことを意味します。例えば、日本株投資信託が目標とする割合よりも5%多くなってしまい、その代わりに新興国株投資信託が5%少なくなってしまったとしましょう。この場合、日本株投資信託を一部売却し、入ってきた資金で新興国株投資信託を買うわけです。こうして、目標とするバランスを取り戻すわけです。

ゼミ生をはじめとして、皆さんの参考になれば幸いです。ただし、投資は自己責任でお願いします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました