みなさんこんにちは。神奈川大学経営学部・准教授の尻無濱です。
中京大学教授の矢部先生が、新刊『決算書×ビジネスモデル大全』を出版されました。
この本は、決算書を図表化することで分かりやすく表現しています。もともと慶應大学のビジネススクールで生み出された、「比例縮尺図」が活用されています。
※矢部先生は慶應大学ビジネススクール出身
様々な企業のビジネスモデルの特徴と比例縮尺図を結び付けて解説し、企業の決算書とビジネスモデルを一体的に理解しようという狙いの書籍です。
登場する企業は有名なものが多く、コメダ、ニトリHD、サカタのタネ、レナウンなどの事例は講義の中で使えそうな興味深い事例でした。
私の個人的な感想ですが、この本は以下のような学生さんに特におすすめできると思います。
①簿記に興味はないけど決算書を読めるようになりたい
経営学部に所属している学生さんの中には、もともと計算を苦手としており、簿記にも苦手意識を抱いている人が多い印象です。
その一方で、簿記は苦手だけど経営学部に入ったのだから決算書ぐらいは読めるようになりたいという人も多い。
この本には細かい簿記の話は出てこないので、簿記に苦手意識を持っている人でも読み進めることができるでしょう。
ただし、会計の用語は出てくるので、用語の意味を調べながら読んでいくことにはなります(例えば売掛金、有利子負債など)。
②企業のビジネスモデルやビジネス用語について興味がある・ある程度知っている
企業のビジネスモデルやビジネス用語に興味があり、ある程度知っている学生さんは、この本は読みやすいと思います。
例えばフランチャイズ経営やSPA(製造小売業)などのような特徴的なビジネスモデルについての知識があれば、その知識と決算書の図表を結び付けて理解できるため、サクサク読めます。
③細かい計算方法ばかりのテキストは読みたくない
決算書の分析(財務諸表分析)の教科書には、細かい計算方法がたくさん載っているものがあります。
そういう教科書にチャレンジして「難しい!計算が苦手な自分には、決算書の分析は無理かも…」と断念した経験がある人には、この本はおススメできます。
細かい計算式は出てこず、ビジネスモデルの図表化、割合(パーセント)の数値、ビジネスモデルの説明が中心なので、細かい計算式を理解して読みすすめる必要ありません。
「自分に当てはまってる!」と思う学生さんは、ぜひ読んでみてください。財務諸表分析の入門としてよい本だと思います。
なお、この本を読んだ後に財務諸表分析をもっと本格的・体系的に勉強したいと思う人もいるでしょう。その時は、桜井先生の『財務諸表分析(第8版)』や乙政先生の『財務諸表分析(第3版)』のような、より発展的なテキストを読むのがよいです。どちらも定評のあるテキストで、やや難しいですがおススメできます。
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