【学生向け】日商簿記、サークル部長、バイトリーダーで新卒時に評価されるのは? 資格のシグナリング効果

person marking check on opened book 簿記
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みなさんこんにちは。神奈川大学経営学部・准教授の尻無濱です。

Twitter上で、「サークルやバイトでの活躍より簿記のほうが評価されるのでは!?」という意見をみかけました。

サークルやバイトでの活躍も、会社によっては評価が高いと思います。一方で、日商簿記の資格を持っていることを高く評価する企業があるという話もよく聞きます。

私のTwitterのフォロワーにはいわゆる「会計クラスタ」の人たちが多いのですが、彼らを念頭に日商簿記2級以上、サークル部長、バイトリーダーのうちどれが最も評価されるかを聞いてみました。

どれも簡単にはとれない/なれないものなので、履歴書に書いたりガクチカ(学生時代に力を入れたこと の略)として面接時に話せたりするものです。

アンケートの結果は以下の通り。

日商簿記2級以上が圧倒的に評価されていますね。閲覧用を除くと、7割近くの人が日商簿記2級以上を最も評価しています。

もちろんTwitterのアンケートなので、回答者が私のフォロワーや会計クラスタに偏っています。それを踏まえると、少なくとも会計関連の仕事をしている人たちには、日商簿記2級以上をサークル部長やバイトリーダーより評価する傾向があると解釈できそうです。

なぜ日商簿記2級以上が評価されるのか:シグナリング理論

なぜ日商簿記2級以上がこんなに高く評価されるんでしょうか。

一つの解釈として、日商簿記2級以上を取得していることが就活生の能力を示すシグナルになっているということが考えられます。

シグナリング理論は、まさに採用の場などを想定した経済学の理論です。その内容の解説は小野先生の論考に譲りますが、ざっくりいうと労働市場の売り手と買い手に情報の非対称性があるとき、高学歴や難関資格は売り手の能力を示すシグナルになるということです。

『人事と組織の経済学 実践編』という本も、シグナリング理論について詳しく解説しています。

能力の高い人でないと、高学歴や難関資格の取得は難しいですよね。能力が低い人では相当頑張っても高い学歴や難関資格を取ることは難しい。そのため、高い学歴や難しい資格を持っていること自体が、その人が高い能力をもつというシグナルになるわけです。

翻って先ほどの3つの選択肢を見てみましょう。サークル部長やバイトリーダーの経験は、それだけでは能力の高さを示すシグナルとしてはあまり信頼できそうにありません。サークル部長やバイトリーダーは多少のリーダーシップはあるでしょうが、だからと言って学習能力が高く勤勉かというとそこはよくわからないわけです。

日商簿記2級以上は、合格率の低さ(2級でさえもひどいときは10%を切っていますね。1級は言わずもがな)、合格するまでに必要な勉強時間の長さ(初学者だと350~500時間)は知られています。ある程度の学習能力の高さ、勤勉さがないと取れなそうですね。私のフォロワーに多い会計クラスタの人々だと、このあたりは詳しいでしょう。

そうすると、新卒採用時に3つのうちどれが高く評価されるかというと、日商簿記2級以上になる…という話ではないかなと私は考えています。

真面目に検証するには

日商簿記2級以上が本当にサークル部長やバイトリーダーより高く評価されるかを真面目に検証しようとするなら、Twitterアンケートなんかではダメですね。笑

まずはもう少しリサーチ・クエスチョンを明確にしないといけないですし、選択肢がこれでいいのかという点も検討の余地があります。

Twitterアンケートだと回答がフォロワーやその近辺に限られるので、どうしても回答が偏ります。そもそも回答者がどこのだれか不明なので、調査結果について「会計クラスタはこうだ」というのすらけっこう乱暴です。

真面目に検証するなら、このあたりの問題をクリアする必要があります。調査設計をきちんと検討すれば、学生の卒論ネタになりそうですね。

最近出た卒論の書き方本の中で、私のゼミでも参考にしているのは小熊先生の『基礎からわかる 論文の書き方』です。卒論を念頭にきちんと調査設計を考えたい場合には参考になると思うので、ぜひ購入して読んでみてください。気になるところだけ拾い読みするのでもOKだと思います。

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