リバランスって意味あるの?学術研究の見解は…!?

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皆さんこんにちは。神奈川大学経営学部・准教授の尻無濱です。

資産運用のアドバイスっていろいろありますが、その中のひとつに「定期的にリバランスすること」がありますよね。複数の資産に投資するとき、例えば株式に60%、債券に40%投資するなどバランスを設定して投資することがあります。投資開始時点からしばらくたつと、資産価格の変動によってこのバランスが崩れていきます。今(2024年3月)だと株高になっているので、株式の値段が大きく上がっており、例えば株式の占める割合が70%とかになってしまう。このとき債券の割合はその分減って、30%になっています。ここで、株式を売ってそのお金で債券を買うことで、元々の割合である株式:債券=60:40に戻す…という手続きが、いわゆるリバランスです。

このリバランス、人によってはとても心理的な抵抗を感じるようです。「こんなことして何の意味があるの?せっかく値段が上がって儲けが出ている株を売って全然儲かってない債券を買うなんて、そんなことやりたくない!」というところでしょうか。

ところがこのリバランス、学術的には「やったほうがリターンが改善する」ことが知られています。今回は、ファイナンス領域における著名な研究者でもあり実務家でもあるアンドリュー・アング著『資産運用の本質』の第4章「長期投資」を参考に、リバランスがリターンを改善するエビデンスを簡単に紹介しようと思います。

リバランスはリターンを改善するのか?

アングによると、リバランスは「バリュー投資戦略の一種」と解釈できます。それはこういうことです。

株式60%、債券40%のポートフォリオにおいて、株式の値段が上がって債券の値段が下がった時に、値上がりした株式を売却し値下がりした債券を購入することになります。値段が下がって割安になったものを購入しているので、バリュー投資戦略と解釈できるということです。

これはバイ・アンド・ホールド戦略とは違います。バイ・アンド・ホールドだと購入したものを売買せずひたすら持ち続けることになります。株式と債券のバランスが崩れても持ち続けるわけですね。最近はS&P500やオールカントリーの投資信託に資金を100%投資してひたすら持ち続ける戦略が流行っているので、これもバイ・アンド・ホールドですね。

リバランスすると、価格が下落して将来の期待リターンが高い資産を購入し、価格が上昇して将来の期待リターンが低い資産を売却するため、ポートフォリオ全体の将来の期待リターンが改善するとされます。

過去のデータも、リバランスが実際に効果を発揮してきたことを裏付けています。アングはいくつかのエビデンスを示しています。その一つが1990年から2011年にかけての調査結果です。そこでは、米国株60%・米国長期債券40%のポートフォリオをくんで四半期ごとにリバランスした場合の結果と、米国株100%を保有した場合、米国長期債券を100%保有した場合の結果(バイ・アンド・ホールド)が比較されています。それによると、投資開始時点を1ドルとした時に、債券100%投資戦略は投資終了時点で5.75ドル、株式100%投資戦略は6.30ドルで終わるのに対し、リバランスした場合は6.90ドルに到達しています。

リバランスしたほうが株式100%持っているよりもリターンが大きいというのは驚きですね。もちろん、投資の時期にもよるでしょうけれど、長期的に見ればリバランスをした方がリターンは改善できるという研究成果が蓄積されているようです。

アングは、このようにリバランスでリターンが改善することをリバランス・プレミアムと呼び、価格が安いときに購入して高いときに売却することで得られる逆張りの恩恵をリバランスを通じて享受できていると指摘しています。数理的な背景にもとづいて、「リバランスされたポートフォリオは長期的には無限の資産価値をもたらす」とも主張しています。

どうでしょうか。アングの主張や彼が示してくれたエビデンスを参考にすると、リバランス、やったほうがいいように思えますよね。もちろん投資は自己責任なので、リバランスをするもしないも自分で決めればよいと思いますが、私はリバランスをやっています。研究成果を妄信してるわけです。笑

今回紹介したアングの『資産運用の本質』は、多少数式が出てきますが説明がわかり易く、具体例も豊富で、資産運用に関する理解が深まります。私も読んで新たに得た知識が多く、学んだことを研究や教育に活用したいと考えています。皆さんももし興味があれば、ぜひ読んでみてください。

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