私大が私学助成金で食ってるってホント?私大の収益構造を見てみよう

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みなさん、こんにちは。神奈川大学経営学部・准教授の尻無濱です。

最近、政府が「子ども“3人以上”で大学無償化」という方針を打ち出しています。そのこともあってか、大学の収支についてSNS上でも話題になっています。「大学は私学助成金を受け取っておりほとんどこれで食っているようなもの」といった、アヤシイ言説も飛び交っています。

この意見に対して、事実と異なるという指摘をする人もいます。

どちらが正しいのでしょうか?
結論から言えば、後者が正しいです。私立大学が「ほとんど私学助成でくっているようなもの」というのは誤りです。

私立大学の主な収益源は何か?

文科省は私立学校・学校法人基礎データというデータ集を公表しており1、その最新版では、ごらんのとおり補助金は10%程度しかないことがわかります。

出所:文部科学省 「私立学校・学校法人基礎データ」2023年12月9日閲覧

では、私立大学はなにで食べているのでしょうか?
グラフを見れば一目瞭然。「学生生徒等納付金」で食べているんですね。

「学生生徒等納付金」はわかり易く言えば学費です。学生やその保護者が支払った入学金や授業料が、大学の主要な収益源です。その割合は年度によって多少上下しますが、だいたいは80%。大学の収益の8割は、学費なのです!

そのほかにも、受験料などの手数料収入、食堂・売店・公開講座等から得られる付帯事業収入寄附金なども重要な収益源で、これらを合わせると10%前後になるケースが多いようです。

神奈川県内の私大の収益源を見てみよう

ここで具体例を見てみましょう。各大学の事業活動計算書(企業でいうところの損益計算書)を見れば主な収益源が分かります。大学の本業からの収益を示す「教育活動収入計」を分母に、学費と補助金の割合を計算してみます。年度は2022年度のものを使います。

まずは私の勤務先である神奈川大学。神奈川大学では、学費からの収益が77.5%、補助金が12.8%。やや補助金の割合が大きいですが、「ほとんどこれで食べている」とは言えないですね。

次に、名門女子大学であるフェリス女学院。フェリス女学院では、学費からの収益が75.6%、補助金が13.2%。神大と同様の傾向です。

最後に、工学系の大学である湘南工科大学。湘南工科大学では、学費からの収益が78.3%、補助金が15.2%。やはり主な収益源は学費です。

もちろん、補助金は私大の本業からの収益としては10%~15%程度を占めていて、重要な収益源の一つであることは間違いありません。しかし、10%~15%程度の収益源である補助金をとりあげて、「ほとんどそれでくっているようなもの」というのは明らかに誤りですね。

私が担当している「非営利企業会計論」では、この手の大学の財務諸表分析も行います。ちょうど今週、神大の財務諸表分析を行ったところなので、復習がてら取り上げてみました。

きちんとデータに基づく議論をしたいものです。思い込みでテキトーなことを言うのはダメ、絶対!

私大をはじめ、非営利組織の財務諸表分析に興味がある人は、入門用の書籍がいくつか出版されているので、読んでみるとよいでしょう。

  1. 決算書のデータは、日本私立学校振興・共済事業団の『今日の私学財政』であり、文科省が独自に集計したものではないようだ。 ↩︎

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