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【大学院生向け】英語論文を書くメリット・デメリット

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gray steel sheet 研究
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皆さん、こんにちは。神奈川大学経営学部・准教授の尻無濱です。

Twitterで海外の英文査読誌に論文を投稿するメリットはたくさんあるよという話をしたのですが、具体的にどういうメリットがあるかを書かずじまいでした。そこで、私が実際に英語論文を投稿し掲載されたことで感じた様々なメリットを紹介します。メリットの一方で、デメリットもあるので、そちらも紹介しておきます。まだ英語論文を書いたことのない大学院生向けの文章になります。先人たちの体験談の二番煎じに過ぎないですが、ご笑覧ください。

なお、前提として投稿先は分野内で定評のある学術誌とします。

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英語論文を英文査読誌に投稿するメリット

私は非営利組織研究1のトップジャーナル2であるNonprofit and Voluntary Sector Quarterly(NVSQ)に論文が掲載された経験があります。掲載される過程や掲載されたことで得られたメリットを以下で紹介します。

読者が増える

国内だとニッチすぎて研究している人がほとんどいないようなテーマでも、海外であれば同じようなテーマで研究している人が大勢います。

私は非営利組織の経営組織化・ビジネスライク化といったことに興味があって研究していたのですが、先行研究はほとんど英文査読誌、国内で同様の研究をしている人は非常に少ない状況でした。日本語で研究成果を発表してもあまり読者がいない状況だったわけです。

一方、海外ではこのテーマでレビュー論文が出てその引用件数が1,000回近くなるほど盛り上がっているテーマです。当然英語で論文を出したほうが読んでくれる読者は増えます。同じテーマで研究してくれる人が読んでくれるので、自分の論文が引用される回数も増えます。この喜びは大きいです。自分の研究成果が海外の学術研究に貢献しているという感覚が得られます。

論文の劇的な改善につながる

国内だと研究者の数が限られるため、どうしても査読者集団の規模が小さくなります。前述したように、メインストリームではない研究をしている場合は自分と似たようなテーマに関心がある人が国内に少ないです。そうすると、自分のテーマ・研究手法の両方に詳しい査読者からコメントをもらえるとは限りません。

一方で海外だと自分の研究テーマに関心がある査読者が無数にいるので、テーマや研究手法に合致した的確なコメントを得られる可能性が高くなります。実際に、自分がNVSQに投稿した論文は、4人のレフリー3から様々な改善コメントをもらい、劇的に論文内容が改善しました。

これまで非営利組織研究・会計学研究の学術誌に投稿してきた経験によると(いっぱいリジェクト食らっている/査読が長引いているのであまり載っていませんが…)、分野内で定評のある学術誌に投稿したほうが、的確なコメントをもらえる=論文の強化につながることが多いと思います。私は非営利組織研究とともに管理会計研究も専門にしている(というかこっちがメイン)のですが、Accounting, Organizationos and SocietyやManagement Accounting Researchに投稿した際にもらったコメントは論文の改善につながるよいコメントでしたね(リジェクトされましたが)。

研究業績を評価する大学への就職機会が増える

家庭の事情で前任校から転出しようと就活していた際、NVSQへの論文掲載前はあまり面接に呼ばれませんでした。しかし、掲載後はいくつかの大学から面接に呼ばれたので、定評のある学術誌に論文が載るというのは就活上では効果覿面だったように思います。

ただし、論文業績というのは大学教員採用における1つの軸にしか過ぎないため、定評のある雑誌に論文が掲載されればそれだけで志望する大学に就職できるとは限らない点には注意してください。大学院生の方は大学の採用人事は研究業績のみで決まるという勘違いをよくしがちです。ところが実際はそうではない。

採用側は、研究業績以外にも研究テーマと授業科目の親和性、教育歴(どんな授業を担当してきたか)、委員歴(学務をやってくれるか)、年齢(学部の年齢構成によっては若手が欲しい/中堅が欲しい/ベテランが欲しいという違いがあることも)、教員の男女比(女性比率が高いと補助金が増える)、人柄(他責的な人や協調性のない人、ハラスメントする人とは一緒に働きたくない)などなど様々な要素を考慮します。英文査読掲載を高く評価してくれる大学があるとはいっても、それは沢山ある評価軸のひとつにすぎないという点には注意してください。業績が逆に作用することもありますが、それについては後述します。

新しい仕事につながる

NVSQに論文が載ってから、非営利組織研究の英文査読誌から査読依頼が来るようになりました。NVSQやNonprofit Management and Leadership(NML)、Voluntasなど非営利組織研究において重要な3誌全てから査読を依頼してもらえました。最新の研究を改善するためのコメントができて、研究コミュニティに貢献していることが実感できました。

立命館大の富永京子先生がNVSQ掲載論文を読んでくれて、NPO学会の研究報告セッションに招待してくれたこともありました。招待講演は久しぶりで、NPO学会での報告も初めて、これまであまり交流したことの無かった他分野の先生方とディスカッションできたのは貴重な経験になりました。

こんな感じで、NVSQに論文を載せなければ経験できなかったような仕事ができたのは大きなメリットでしたね。

みんながお祝いしてくれるので嬉しい

NVSQに論文を載せた後、同世代の研究仲間や研究会で一緒になった先輩研究者たちから、SNSや飲み会の場でずいぶんお祝いしてもらいました。お互い頑張っている仲間たちに自分の成果を喜んでもらえて、とても嬉しかったです(小並感)。

英語論文を英文査読誌に投稿するデメリット

英語論文を英文査読誌に投稿することで上記のようなメリットが得られる一方で、デメリットもあります。これも私が実際に経験したものです。

まず、国内学会誌に掲載してもらうよりもかなりお金がかかります。会計学分野だと国際会議で報告(場合によっては論文を練り上げるために複数回参加)→論文を投稿、というルートが一般的です。そもそも参加費が高く、どこに参加するにしても5万円以上はすると思います。今は円安もあり、海外渡航費の負担が大きくなっていますね。コロナ禍前に比べて1.5倍程度にはなっているのではないでしょうか。参加費・渡航費合わせて数十万円の負担は大きいです。英文校正にも追加的な費用が掛かります。プランや納期にもよりますが、5万~15万円ほどはみておかないといけません。このようにお金がないと、英文学術誌4に投稿したくともできないというのが現実です。

次に、日本語論文より掲載までの時間がかかるという問題もあります。NVSQ論文は1年程度かかりましたがこれはまだマシなほうでした。別の投稿中の論文のうち1つはすでに2年かかってまだ査読対応中、もうひとつは投稿してからもうじき2年でついに3ラウンド目に突入しました。掲載までまだまだかかりそうです。査読コメントが厳しく、それ自体は論文の改善につながるのですが、査読対応が大変なのです。日本語論文だと学会報告から次の号出版までのスケジュールに合わせて投稿から3~4カ月、長くても半年以内にアクセプトされることが多いように思います。ダメならダメでスパッとリジェクトになるのが日本語論文の特徴ですかね。このように英文査読誌は査読対応が大変で掲載まで日本語論文よりかなり時間かかりますし、リジェクトされたらまた別の学術誌に投稿しなおしになってしまいます。時間をかけて査読対応したのにもかかわらずリジェクトをくらったときは、徒労感がすごいです…。

最後は、研究業績が特有のシグナルとなり、就職/転職時に不利になることがあるというものです。これは英語論文に限った話ではないのですが、研究業績の数が相場(現任教員の平均)よりかなり多かったりよい雑誌に掲載されていたりすると、「こいつ校務やらずに研究しかしないんじゃないか、採用しても2~3年で研究中心の別の大学に異動していなくなるんじゃないか」と警戒されることが多いように思います(面と向かってそんな話をされたことも…)。そうすると、主観では十分に業績があるのに面接にも呼ばれないだとか、面接で落とされるとかいうケースが増えます。

もう10年以上前なので時効だと思いここに書きますが、ある大学の面接で就職してからの研究について聞かれ、これまでの研究業績の内容とこれからの計画を熱心に語ったところ、面接者の一人から「あなたが思い描くような理想的な研究環境はここにはない!」と語気を強めて告げられ、その場で履歴書を封筒にしまわれたことがありました5。もちろんその大学には採用されませんでした。何が気に障ったのか今でも分かりません…。そういう目にあったら、ミスマッチだったと思ってあきらるのが肝心です。もっと自分のことを評価してくれるところに行きましょう。

まとめ:まずは挑戦してみよう

メリット、デメリットいろいろ書きましたが、やはり定評のある英文査読誌に掲載されると、同じテーマで研究している海外の人々に読んでもらえる・引用してもらえる、学問に貢献しているという特有の喜びが得られる点が最も大きなメリットです。査読コメントで論文が劇的に改善するケースもあります。そういう経験をしたいのであれば、英文査読誌に挑戦してみましょう。管理会計領域であれば、メルコ学術振興財団牧誠財団が助成をしてくれるので、どんどん応募しましょう。

英語論文執筆は、かつてと比べて相当にハードルが下がっています。今は高性能な翻訳アプリのDeepL(私は有料版で使っています)がありますし、データ分析には無料のRStudioが使えます。文献管理には無料アプリのMendeleyがあり、英文校正サービスもAI翻訳対応で割安なものなどが出てきています。こういうものをどんどん使って、英語で論文を書いてみましょう。

  1. 会計学を専門としている身なのですが、会計学トップジャーナルの掲載経験はありません。挑戦しているのですが、なかなか載せることができていないのが現状です。 ↩︎
  2. 誰も注目していない英文ジャーナルの場合は、どうしても読者が少なくなってしまうので、掲載されても以下で紹介するメリットはあまり実感できないかもしれません。私は会計学であまり目立たないジャーナルに掲載経験があるのですが、やはりあまり引用されないし影響力ないな~というのが実感です。 ↩︎
  3. 普通はレフリーは2名だと思うのですが、なぜか初めから4名のレフリーがいました。他の海外の学術誌にも何度も投稿していますが、どの雑誌もレフリーは2名でした。おそらく査読コメントが割れて、追加の査読者を呼んだのだと思います。 ↩︎
  4. 会計学や非営利組織研究だと、論文投稿料はかからないケースが多いように思います。 ↩︎
  5. 他の大学の面接でも、「うちの大学で働くようになるとこれまでのように研究できないと思うけど大丈夫ですか?」と面接者に聞かれたことがありました。 ↩︎

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