公会計の講義で、行政評価についてもそれなりの時間を割いて教えている。行政評価は公会計の財務会計・管理会計を両面から支える重要な手法である。
行政評価はアカウンタビリティを果たす機能を持っており、それは財務会計的な側面を持つということである。決算や財務書類には詳しく書かれていない情報が、行政評価の報告書には書かれている。例えば事業ごとの予算配分額と実績、今後の計画などである。これらを統一的なフォーマットで知ることができる資料は、市民にとっては行政評価ぐらいだと思う。自分が収めた税金がどのような事業に使われており、そこでどのような成果が出ているか、その事業は今後継続していくのか、それとも廃止するのか…こういった情報は、行政が公開している行政評価の報告書、特に事務事業評価を見ることで得ることができる。
また、事業実施の権限と責任を担当部局に割当てたうえでPDCAサイクルをまわすという観点からは、行政評価は管理会計的な面を持つ。行政評価の管理会計的な側面は、松尾(2009)『自治体の業績管理システム』をはじめ、様々な論文・書籍で紹介されている。
まあこういったことを、実例を取り上げつつ講義で教えている。教材には以前から山形市の事務事業評価報告書を活用してきたのだが、ここ2~3年、事務事業より大きなくくりの施策評価しか公表されなくなってしまい、得られる情報がめっきり少なくなってしまった。山形市の隣の天童市については、講義ではその決算カードや財務書類よく題材にしていて、多額のふるさと納税が生んでいると思われる効果を楽しく話している。天童市の行政評価報告書を教材に使いたいところだが、天童市も事務事業評価の情報開示には消極的である。PDFを見るとわかるように、少なくとも公開しているPDFの中には事務事業を評価した結果、各事業の実績がどうだったか、それを示す指標が見当たらないのである。
それで仕方なく、ここ数年の講義ではかなり昔の山形市の事務事業評価報告書を教材に使ってきたのだが、最近、山形県内で新たに事務事業評価の結果を詳細に公表している自治体を発見した。それは、新庄市である。PDCAサイクルにしたがって詳細な情報が事務事業ごとに報告されており、これだと学生も事務事業評価の内容を理解しやすい。
事務事業評価を公表してもらえると、学生にとって身近な教材になる。山形県内の市町村で行政評価を担当する部署の方には、ぜひ事務事業評価まで詳しいレベルで開示していただきたい。