ブログ

管理会計研究論文の読み方(1)はじめに

大学の経営学部や商学部では、3・4年次になるとどこかのゼミに配属し、専門的な書籍を読んだり、学外に出て企業を対象にフィールドワークをしたりすることが多いと思う。大学によっては卒業論文の執筆が必修で、4年生になると就職活動のかたわら、卒業論文執筆の準備をしなければならない場合がある。ゼミの担当教員に「卒論執筆のためには、まずは管理会計の学術論文を読んで、テーマを探しなさい」と指導され、気はすすまないけれども担当教員に紹介された「論文」なるものを読まされることもあるだろう。しかしこの論文というのが厄介で、読もうと思ってもすらすら読めるものではない。今まで管理会計のテキストを読んで計算問題を解いたり、企業の事例を学んできた比較的熱心な学生でも、やれ「なんちゃら理論」だとか、やれ「なんちゃら分析」だとか意味不明・難解な専門用語に圧倒され、論文を読むのをあきらめてそのまま放置してしまうこともあるだろう。しかし卒論執筆はいつかはやらないといけない。そのためにも論文を読まなければならないのだが、難解だし読んでいると眠くなるし、就活は忙しいし… と、論文を読むのがどうしても後回しになってしまっているという学生は多いことだと思う。

この(一連の)ブログ記事では、管理会計を専門にしている学部4年の学生を対象に、管理会計研究論文の読み方を解説する。論文が難解で読むのが苦痛だ、論文を読むと眠くなってしまうという学生に読み方を知ってもらうことで、論文を読むのを楽しんでもらえるようになることが記事執筆の目的である1) 尻無濱ゼミ生に読んでもらい、私が細かく指導せずともゼミ生が自ら進んで論文を読むようになることが、記事を書く最大のモチベーションである。自分が楽をしたいからこの記事を書いているわけだ。

管理会計研究といっても色々なものがあるが、このブログでは日本語で書かれた論文を取り上げ、その解説を通じて読み方を学んでもらう。私(尻無濱)が面白いと思う論文で、インターネット上で入手が容易なものをなるだけ取り上げていく方針である。日本語論文の中でも、インタビュー結果などに基づき書かれた定性的研究と、アンケート調査や財務データの分析結果を報告する定量的研究を中心に読み方の解説を行う。定性的・定量的2) 他にも、歴史的方法や数理的方法、学説研究などがある。歴史的方法や数理的方法については、廣本・加登・岡野編(2012)『体系現代会計学 第12巻:日本企業の管理会計システム』中央経済社 の第8章を参照。といった言葉はブログ記事の中できちんと説明する予定なので、現段階ではそういう研究があるんだーと思ってもらえればいいだろう。

References   [ + ]

1.  尻無濱ゼミ生に読んでもらい、私が細かく指導せずともゼミ生が自ら進んで論文を読むようになることが、記事を書く最大のモチベーションである。自分が楽をしたいからこの記事を書いているわけだ。
2.  他にも、歴史的方法や数理的方法、学説研究などがある。歴史的方法や数理的方法については、廣本・加登・岡野編(2012)『体系現代会計学 第12巻:日本企業の管理会計システム』中央経済社 の第8章を参照。

ロジスティック回帰:標準誤差が異常に大きい場合の対処

手元のデータでRのglm関数を使ってロジスティック回帰分析をしていたところ、以下のようなエラーが出た。

Warning message:
glm.fit: 数値的に 0 か 1 である確率が生じました

summary関数で結果を表示することはできるのだが、切片やいくつかの変数の標準誤差が異常に大きい。数千もの値になっている。これは何か問題があると思って調べたところ、完全分離(complete separation)が起きている場合にこのような計算結果が表示されることが分かった。完全分離とは、「独立変数と従属変数のクロス表において度数がゼロのセルが存在する」(林他 2017, p.225)ことを指す。このような場合、「対数オッズがプラスまたはマイナス無限大になってしまい、反復計算の過程で最終的な解に収束していかない」(林他 2017, p.225)ことが知られている。林他(2017)によると、偏回帰係数や標準誤差が異常に大きな値になっている場合に完全分離が生じている可能性が高いという。実際、手元のデータでクロス集計をしてみたところ、完全分離が生じていることを確認できた。どうも、小標本でめったに起きない事象を扱っている場合に、このような完全分離が起きやすくなるようだ。

このような場合の対処方法として、精確ロジスティック回帰(exact logistic regression)とFirthの方法によるバイアスを修正したロジスティック回帰(Firth’s bias-reduced logistic regression; 以下、Firthの方法)が提案されている。それぞれの詳しい内容については、以下の記事が参考になる。

Rであれば、精確ロジスティック回帰はelrmパッケージのelrm関数で実行でき、Firthの方法はlogistfパッケージのlogistf関数を使えば実行できる。精確ロジスティック回帰は下準備が面倒なので、今回はlogistf関数を使って分析を実行することにした。logistf関数を使ったFirthの方法は、help関数で調べてみると簡単に実行できることがわかる。help関数で使い方を調べた時に表示される内容と同じものが書かれているwebサイトを以下に示す。

logistfパッケージは、Heinz氏が作成したものである。この方は、Firthの方法を適用し完全分離の問題を解決する方法を提案したHeinze and Schemper (2001, 2002)の著者の一人である。アヤシイ人が作ったパッケージではないし、安心して使っていいだろう。

会計学研究での利用についてだが、Firthの方法を使った論文としては、Wen et al. (2017) がある。中国の学生が公認会計士と企業内の会計担当者のどちらを選ぶかというキャリア選択をする際に、どのような要因がその選択に影響を与えるかを定量的に分析した論文である。この論文では、いわゆるロバストネス・チェックのような形でFirthの方法で分析した結果が示されている(p. 136)。彼らは偏回帰係数、標準誤差、χ二乗値、p値を示しており、モデル全体の有意性の検定として尤度比検定の結果を掲載している。多重共線性関係の指標としては、トレランスおよびVIFを示している。論文でFirthの方法を活用する場合には、彼らの報告の仕方を参考にするとよいだろう。

実際に手元のデータを使ってFirthの方法を実行してみたところ、問題は解決された。統計学に詳しい人にとって、このような対処法は当たり前に知っていることなのだろうが、私のように統計学に明るくない人が同じ問題に引っかかることもあるだろう。なのでブログに書いて共有しておく。

 

小ネタ:Bluetoothペアリングにミスった時のリカバリー方法

研究ネタではないのだが、また同じ状況にはまりそうな気がするので、備忘録として書いておく。

Bluetoothのペアリングの接続に失敗すると、PINコードがPC側に表示されなくなる場合がある。その時は、接続したい機器(例えばキーボード)が要求するのと同じ桁数の適当な数字をPC側のPINコード入力欄に打ち込む。その後すぐに、機器側で同じ番号を入力すると、ペアリングが成功する。

例:キーボード(PINコード4桁)の場合

  1. PC側のBluetooth追加から接続したいキーボードを選択
  2. PINコードを要求されるので、4桁の適当な数字を入力し、「接続」をクリック
  3. すぐにキーボード側で全く同じ数字を入力してEnterキーを押す
  4. 接続完了!

機器が要求するPINコードが6桁なら、6桁の数字を入力すればいい。なぜこれでうまくいくかはよくわからないが、PINコードが表示されなくなってもこれで解決できる。

 

非営利組織研究の海外学術雑誌リスト

非営利組織研究の学術雑誌のリストがHarvard Kennedy School、University of Michigan、それからWikipediaのNonprofit Studiesの記事に掲載されている。

Harvard Kennedy Schoolのリスト(individual journals)

University of Michiganのリスト

WikipediaのNonprofit Studiesの記事

これら3つのリストを見ると、やはり非営利組織研究ではNonprofit Voluntary Sector Quarterly(NVSQ)、Nonprofit  Management & Leadership(NML)、そしてVOLUNTASが重要なジャーナルとして位置づけられているようだ。

そのほかの重要なジャーナルとしては、International Journal of Nonprofit and Voluntary Sector Marketing、Journal of Nonprofit & Public Sector Marketingなどが非営利組織マーケティングで重要らしい。

Public Administration Review(PAR)なんかの公共経営系の雑誌はどういう扱いなのだろうか。ぼちぼち引用されている気がするが。

 

介護経営関連のwebサイト・調査リスト(研究者向け)

介護経営関連のwebサイト・調査のリスト(研究者向け)です。興味・関心のある人はご活用ください。他に有用なサイト・調査があれば、ぜひコメント欄に書いてください。

厚労省による調査

  • 介護サービス情報公表システム
    • 全国の介護サービスに関する情報を都道府県別に公表している。サービスの細かい内容や人員体制から、運営法人の情報、運営状況まで詳細な情報が提供されている。尻無濱がそのうちwebスクレイピングをして、利用しやすい形にまとめて公開する予定
  • 介護サービス施設・事業所調査
    • 厚労省によって毎年実施されている、介護施設・事業所を対象とした調査。介護サービスごとの数、提供体制、サービス内容などを都道府県ごと、年次ごとに把握できる。個票を見ることができればとても便利だが、個票は公開されていない。csvファイルがe-Statにある。

その他のwebサイト・調査

  • 社会福祉法人の財務諸表等電子開示システム
    • 2017年6月から稼働した社会福祉法人の財務諸表等電子開示システムのサイト。まだ多くの社会福祉法人では現況報告書や財務諸表の開示が行われていないが、いずれ充実してくるだろう。

 

Rスクリプト表示テスト

Rのスクリプトがきちんと表示されるか、試してみます。プラグインはCrayon Syntax Highlighterを使います。

 

無事に表示できましたね。そのうち、自分のメモがてら、分析用のコードの断片をアップロードしていこうと思います。